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介護保険サービスの自己負担額は?収入状況によって変化する費用

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介護保険サービスの自己負担額

親の介護に直面した時、在宅介護を支えてくれるのが「介護保険サービス」です。このキーワードを知っている方は多いと思いますが、「仕組みや料金システム」については知らない方もも多いのではないでしょうか。

そこで今回は「介護保険サービスの仕組み」「利用した際に必要な費用」について解説します。要介護認定別に定められている利用限度額と、実際に利用したらどのくらい費用が必要なのか?事例を通して紹介します。(執筆者:TORU

 

介護保険サービスの種類は「在宅(居宅)サービス」「施設サービス」「地域密着型サービスの3種類」

2000年度から始まった介護保険サービスには、大きく分けて「在宅(居宅)サービス・施設サービス・地域密着サービス」があります。

介護保険制度が始まった当初は、在宅(居宅)サービスと施設サービスの2種類だけでしたが、地域で高齢者を支えていくという方針のもと、2006年度から地域密着型サービスも導入されました。

自宅で受けられる在宅(居宅)サービス

在宅(居宅)サービスは、在宅介護をしている世帯を支えるための介護保険サービスです。ホームヘルパーに自宅に来てもらい、生活援助や身体介護のサービスをしてもらう「訪問介護」、看護師に来てもらって健康管理をしてもらう「訪問看護」など、多様な種類があります。

これらは要介護認定で利用できますが、利用限度額が定められていて、それ以上に利用すると全額自己負担となるので注意が必要です。

在宅(居宅)サービスの種類

  • 訪問介護(ホームヘルパーによる生活援助、身体介護)
  • 訪問看護(訪問看護師による体調・健康管理)
  • 訪問リハビリテーション(リハビリ専門員が自宅を訪問してリハビリを実施)
  • 訪問入浴介護(自宅に簡易浴槽を持ち込み、入浴介助をしてくれる)
  • 通所介護(デイサービスとも呼ばれ、要介護認定者が事業所に通って食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受ける)
  • 通所リハビリテーション(デイケアとも呼ばれ、通いでリハビリサービスを受ける)
  • 福祉用具貸与(介護ベッドや車いすなど、13種類の福祉用具を保険適用でレンタルできる)
  • 短期入所生活介護(ショートステイとも呼ばれ、最大30日までの短期間だけ施設で入所生活する)

施設に入所することで受ける施設サービス

介護度が上昇して「家族での介護に限界」がきた場合、仕事状況が変化して今まで出来ていた「介護と仕事の両立」が難しくなった場合、介護施設の利用を検討する必要が出てくるでしょう。※介護離職をしないためにも検討すべきです

「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)・介護老人保健施設・介護療養型医療施設」に入所するのであれば「施設サービス」の対象となり、介護保険適用で入居できます。

介護付有料老人ホームを利用するときは、制度上は在宅(居宅)サービスに分類されている「特定施設入居者生活介護」という介護保険サービスが適用されます。

施設サービスの種類

  • 特別養護老人ホーム(要介護3以上の方を対象とする入居施設)
  • 介護老人保健施設(病院から退院後、在宅復帰できるようにリハビリに取り組むための施設)
  • 介護療養型医療施設(重度の要介護者のために医療処置やリハビリサービスを提供する施設。すでに廃止が決まっており、2024年までにすべて介護医療院へ転換)
  • 地域に住む高齢者を対象とする地域密着型サービス

地域密着型サービスの種類

地域密着型サービスは、要介護状態となった高齢者が住み慣れた地域で引き続き生活できるようサポートするために創設されたサービスです。原則として「施設・事業所」が立地する場所と同じ自治体に住民票を持つ人が利用対象となっています。

地域密着型サービスの種類

  • 認知症対応型共同生活介護(グループホームと呼ばれる入所施設で、医師から認知症の診断を受けていることが入所条件)
  • 認知症対応型デイサービス(認知症の方を専門としたデイサービス)
  • 小規模多機能型居宅介護(1つの事業所で訪問、通い、泊りの3つのサービスを提供)
  • 看護小規模多機能型居宅介護(小規模多機能型居宅介護に訪問看護を追加したサービス)
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(定期巡回時と利用者の要請時に自宅訪問を行うサービスで、訪問介護・看護を一体的に提供)
  • 夜間対応型訪問介護(夜間に訪問介護サービスを実施。また利用者からの通報に対応するオペレーションサービスも実施)
  • 地域密着型通所介護(定員18人以下の小規模型のデイサービス)

介護保険サービスの自己負担の割合は「本人・夫婦での所得額」によって異なる!

介護保険サービスを利用すると費用が発生しますが、実際に負担するのは1~3割で、残りの7~9割については、「40歳以上の国民が納付する介護保険料」「国や自治体の税金である公費」で構成される財源によって支払われます。

自己負担額が1割になるのか、それとも2割~3割になるのかは本人・夫婦の年間所得額で決まり、所得が多い人ほど「負担額は大きくなる」という仕組みです。

介護保険サービスの利用者増に伴い2~3割負担が導入

介護保険制度は2000年度からスタートしましたが、当初はすべてのサービスが自己負担額が1割と設定されていました。しかし、高齢化が進んで要介護認定者は年々増加。

内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によれば、2003年時点で介護保険の要介護認定(要支援1~要介護5)を受けた人の数は約370万人でしたが、2015年時点では600万人を突破しました。

増え続けるサービス利用者に対して財源が追い付かなくなり、制度を維持するためには利用者負担の割合を上げざるを得なくなったのです。その結果、2015年の介護保険制度改正では「2割負担」、2018年8月からは「3割負担」が制度化されました。

本人・夫婦の所得額で1~3割の自己負担

自己負担額の負担割合は「本人・夫婦」の所得状況によって規定されています。そのため、所得の少ない世帯だと引き続き1割のままです。

「年金収入」や「その他の収入」が一定以上ある世帯だと、介護保険サービスを利用した際、経済状況に応じて2割あるいは3割を負担せねばなりません。具体的な自己負担額の割合は以下の通りです。

自己負担額が3割負担となる人

合計所得金額が220万円以上あり、かつ単身世帯の場合は「年金収入+その他合計所得金額」が340万円以上(単身世帯)。夫婦世帯の場合は「年金収入+その他合計所得金額が463万円以上」。単身世帯で収入が年金だけならば、収入額が344万円以上に相当する場合。


自己負担額が2割負担となる人

合計所得金額が160万円以上あり、かつ単身世帯の場合は「年金収入+その他合計所得金額が280万円以上」。夫婦世帯の場合は「年金収入+その他合計所得金額が346万円以上」。単身で収入が年金だけならば、収入が280万円以上に相当する場合。


自己負担額が1割となる人

「POINT1・2」以外の方で2~3割負担の対象とならない人。

在宅介護における介護保険サービスの料金表

では実際に在宅介護の現場で、介護保険サービスを利用するとどのくらいの費用が掛かるのでしょうか。「在宅(居宅)サービス」を「自己負担1割」で利用した場合を例に挙げて紹介しましょう。

自己負担1割だと、本来の料金はその10倍かかっていますが、残り9割は介護保険料と税金で構成される財源でまかなわれます。
※以下は基本料金であり、施設の設備状況やサービス加算などで費用は変わります

訪問介護サービス

身体介護・・・20分未満=165円。20~30分未満=248円。30分~1時間未満=394円。1時間~1時間半未満=575円
生活援助・・・20分~45分未満=181円。45分以上=223円
通院時の乗車や降車等の介助=98円

訪問介護

要介護1=645円。要介護2=761円。要介護3=883円。要介護4=1,003円。要介護5=1,124円(1回当たりの利用料金。通常規模の事業所の場合)

訪問看護

20分未満=311円。30分未満=467円。30分~1時間未満=816円。1時間~1時間半未満=1,118円。「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士」のいずれかが訪問する場合=296円(1回当たりの利用料金)

訪問リハビリテーション

20分以上の利用で290円(1回当たりの利用料金)

訪問入浴介護

要支援1・2の場合=全身入浴の利用で845円。要介護1~5の場合=全身入浴の利用で1,250円(1回当たりの利用料金)

通所介護

要介護1=645円。要介護2=761円。要介護3=883円。要介護4=1,003円。要介護5=1,124円(1回当たりの利用料金)

通所リハビリテーション

「要支援」の認定を受けた方の場合・・・要支援1=1,712円。要支援2=3,615円。選択的サービスとして運動機能向上=225円。栄養改善=150円。口腔機能向上=150円。
「要介護」の認定を受けた方の場合・・・要介護1=667円。要介護2=797円。要介護3=924円。要介護4=1,076円。要介護5=1,225円(1回当たりの料金)

福祉用具貸与

福祉用具、貸与事業者によって料金が異なる。

短期入所生活介護

要支援1=437円。要支援2=543円。要介護1=584円。要介護2=652円。要介護3=722円。要介護4=790円。要介護5=856円

介護保険サービスの利用限度額とは?要介護認定の段階別規定されている

在宅介護の中で介護保険サービスを利用するとき、際限なく利用できるわけではありません。限度無く利用出来たら、介護保険制度の財源は破綻することにもなりかねないからです。

そのため、制度上で限度額が定められています。その額以上を利用すると全額自己負担となるので、担当のケアマネジャーと相談しながら限度額を超えないようケアプラン(介護サービス利用の計画書)を作成する必要があるわけです。

居宅サービスの利用限度額

介護保険制度の要介護認定は、介護予防サービスの対象となる「要支援1~2」。介護サービスの対象となる「要介護1~5」に区分されています。

制度上、この区分ごとに利用限度額が細かく規定されています。居宅サービスにおける介護保険サービスの利用限度額は以下の通りです。(2018年3月時点)

要支援1 50,030円
要支援2 104,730円
要介護1 166,920円
要介護2 196,160円
要介護3 269,310円
要介護4 308,060円
要介護5 360,650円

ここで提示されている金額はサービス料金の全額の上限額です。例えば「要介護1」の場合、上限の総額は16万6,920円ですが、1割負担だと1万6,692円までの利用ということになります。

利用限度額を超えた場合の負担軽減策

限度額を超えて利用したら原則全額自己負担となりますが、国による負担軽減の制度もあります。その1つが「高額介護サービス費制度」です。

しかし誰に対しても行われるわけではなく、どのくらいの負担軽減が図られるかは要介護認定者本人と世帯の所得状況によって変わります。

所得状況は5段階に区分されていて、各段階ごとに適用金額が変わるので注意しましょう。そして、高額介護サービス費制度における自己負担の上限金額は、段階ごとに以下のように設定されています。

段階 適用金額 適用者
第1段階 15,000円 生活保護者や世帯全員が市町村民税非課税であり、老齢福祉年金を受給している
第2段階 24,600円 世帯全員が市町村民税非課税であり、本人の公的年金収入額および合計所得金額が80万円以下
第3段階 24,600円 世帯全員が市町村民税非課税であり、本人の公的年金収入額と合計所得金額が80万円以上
第4段階 44,400円 第5段階に当てはまらない市区町村民税の課税世帯
第5段階 44,400円 世帯内に課税所得が145万円以上になる被保険者がおり、かつ世帯内の第1号被保険者の収入の合計額が520万円(単身世帯は383万円)以上

介護サービスを利用した際、この金額を超える額を自己負担する場合は、超過分については支給を受けることができます。ただし「申請によって」利用ができるので、該当する人は必ず役所に申し出ましょう。

また、高額介護サービス費制度以外にも医療保険と介護保険の合計金額(自己負担額)が所定の限度額を超えた場合、超過分の支給を受けられる「高額医療・高額介護合算療養費制度」もあります。病院に通いながら介護サービスを利用している場合は、利用を検討するとよいでしょう。

親の介護に備えて介護保険サービスにどのくらい費用がかかるのか確認を!

将来的に親の介護に直面しそうな方は介護保険サービスにはどんな種類があり、利用するとどのくらい費用がかかるのか?前もって知識として知っておくと後々助かります。
(関連:親の介護費用にはいくら必要?知っておくべきお金のこと

介護保険制度は3年ごとに制度改定が行われます。(次回は2021年)改定の際は介護保険サービスの内容にどのような変更が加えられたのか、チェックするようにしましょう。