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介護現場に導入されつつある人口知能!費用の高さが課題

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介護現場の人工知能について

介護の領域では人工知能の導入が進められています。人材不足が続く介護業界に人工知能を導入することで、介護業務の生産性・効率性を向上させることがその目的です。人手不足を補うということがその背景にあります。

各企業も人工知能搭載の介護機器やシステムを次々と開発しつつ、政府・厚生労働省の支援の下、企業と協力しながら試験的に導入を行っている自治体も増えてきました。

ここ数年のうちに、介護サービスのあり方が大きく変わるかもしれません。
しかし、その一方で人工知能搭載の機器は高額なため、普及という点では思うように進んでいない面もあります。

今回は介護分野における人工知能の現状に注目し、導入のされ方や今後の課題について解説していきます。両親の介護に携わってきたので、業界の課題に少しでも触れていければと思い、今回の記事を書いてみました。

 

介護現場で導入される人工知能!ケアプランの作成を人工知能が行う

人工知能の介護分野への応用という点において、現在もっとも注目を集めているのが「人工知能によるケアプランの作成」です。

ケアプランとは、介護保険制度の下で介護サービスを利用する際の「利用計画書」。保険適用で介護サービスを受けるには、ケアプランを作成して自治体に提出する必要があり、その作成支援の仕事をしているのがケアマネジャーです。

ケアマネジャーは、居宅介護サービス計画(ケアプラン)を作成します。さらには、必要な介護サービスを提供するため、介護サービス提供施設に連絡や調整を行います。

参考:ケアマネジャーの仕事

現在「ケアプランの作成を人工知能が行う」という取り組みが国を挙げて進められています。(参考:豊橋市の取り組み茨城県の取り組み))

政府が人工知能を搭載したケアプランの作成支援を推進

政府は2017年に策定した「未来投資戦略」の中で、AI(人工知能)を活用したケアプランの作成支援について、実用化に向けての課題の整理を支援していくことを明示しました。

2018年度から全国規模の調査を行い、人工知能を活用しているケアマネジャーの実態や利用者からの「評価・反応」についての研究事業を行うことを発表しています。2019年3月までには報告書を公表し、実用化・普及に向けての材料にするとのことです。

2018年4月に開催された経済諮問会議の場でも、有識者の民間議員(大学教授)から「ケアプランの人工知能化を進めていくべき」との意見が出されるなど、専門家の間でも人工知能導入を推進すべきとの見方は強いと言えます。

ケアプラン作成専用の人工知能も開発!すでに導入を始めている自治体も

人工知能をケアプラン作成に活用している自治体も登場しています。例えば豊橋市は、株式会社シーディーアイと共同で「MAIA」と呼ばれる人工知能システムの導入を開始しています。

MAIAはシーディーアイが開発したケアプラン作成に特化した人工知能で、豊橋市における過去8年にわたる10万件の介護記録を記憶。現場で活動してきたケアマネジャーが持つあらゆるノウハウを身に付けています。

実際にケアプランを作成するときは、膨大な「情報・経験知」を根拠にして要介護者一人ひとりに最適な介護サービス・プランを作ります。豊橋市は2018年の7月から実際にMAIAを現場で活用し始めています。

同年8月には、茨城県がMAIAの試験的導入を開始しました。「県」単位で人工知能によるケアプラン作成システムを導入したのは、茨城県がはじめてです。

同県では全面的に人工知能化をするのではなく、人間のケアマネジャーとMAIAが作成したケアプランを比較検討し、両者の意見を合わせた「よりよいケアプランを作るよう利用者も交えて検討してもらう」という方法が採られています。

人工知能搭載の介護ロボットも多数登場!開発が進むコミュニケーション型ロボット

ケアプランの作成だけにとどまらず、人工知能を備えた介護機器は多岐に渡っています。すでに活躍の場を広げているのが、見守り機能を備えた「コミュニケーション型ロボット」です。

介護施設では人手不足から入居者への見守りに、十分な時間が取れないことも少なくありませんが、職員に代わってロボットが見守りや緊急時の連絡などをしてくれるのです。

また、職員に代わって入居者に話しかけながらレクリエーションを行う人工知能搭載ロボットも登場しており、介護施設で人工知能の活躍の場が広がりつつあります。

高齢者の見守りを行う介護ロボット

注目を集めている人工知能を搭載した見守り用介護ロボットの一つが、エルステッドインターナショナルが開発した「Tapia」です。

顔認識機能を活用した対話ができる点が特徴で、利用者の表情から感情を読み取り、それに合わせた「会話・セリフ」をすることができます。もちろん見守り機能も備えており、急な体調不良時など万一の時の対応もしてくれるので利便性は高いです。

パナソニックも横になった状態のまま心拍機能をチェックできるベッドなど、次世代の介護システムの計画を発表しています。高齢者の動き、健康状態を随時把握してくれるので、介護者の負担は大きく軽減できるでしょう。

NTTグループはロボットビジネスに力を入れていますが、2018年6月にはNTTデータが介護施設向けの見守りロボット「エルミーゴ」の提供を開始しています。
(参考:介護施設向け見守りロボットサービス「エルミーゴ」

これは入居者が寝ているベッドの横に設置したセンサーとロボットによって、「身体状態の検知・問題が起こったときの介護職員への通知・本人への声掛け」などを行うという器具です。人手不足の介護現場で、負担軽減につながる装置として注目を集めています。

介護施設でレクリエーションを行う人工知能

介護施設で導入が進められているのが、レクリエーションを行う人工知能搭載のロボットです。富士ソフトが開発した「パルロ」は、ゲームや運動・クイズ・合唱のリードなど、介護職員がレクリエーションの時間に行うような作業を行います。

ソフトバンクが開発した「Pepper」も、レクリエーションを行う介護ロボットとして介護現場で導入されつつあり、使用している介護現場からの評価は高いです。

レクリエーションは介護職員が企画・実行しなければならないことで、人手不足の現場では大変な作業の一つです。ロボットが代わりに行ってくれれば、職員の負担減になるのは間違いないでしょう。

人工知能搭載の機器は高額!費用の高さがネック

人手不足が続く介護施設・介護サービス提供事業者にとって、介護者の負担を軽くできる人工知能搭載の介護機器は有用だと言えます。

ただ、こうした機器を介護現場で使うことについては、課題も指摘されています。その一つが費用の高さ。気軽に現場へ導入できるほど安くないため、スムーズに普及が進んでいないのが実情です。

介護施設ですら「高額」と感じるため、家庭で行う在宅介護へ導入・普及するにはさらにハードルが高いと言えるでしょう。

介護ロボットを取り入れない介護施設が7割以上

介護ロボットオンライン(※ウェルクス社)がネット上で介護施設を対象に行ったアンケート調査によると、介護ロボットを導入しているのは全体の71.4%。7割以上の施設が、導入を決めていないのが現状です。

人材が足りない中、職員の負担を軽減してくれるはずの人工知能搭載の介護機器。なぜ介護現場では導入が進まないのでしょうか?その最大の理由が「価格が高いから」です。

費用が高いからという理由で導入をしない施設が過半数

同アンケート調査では「介護ロボットを導入しない理由」を尋ねたところ、全体の56%を占めたのが「価格が高いから」という理由です。人工知能搭載の介護ロボットは、最先端の技術を結集した機器であるだけに、決して安いものではありません。

実際に購入すると数十万円~数百万円かかり、レンタルする場合でも毎月数万円かかります。経営がうまくいっている大型施設ならともかく、中小規模の介護施設では数台揃えるだけでも大きな負担と言えるでしょう。

これだけの費用ですから、在宅介護の現場でもおいそれと導入できません。富裕層の方なら購入できるかもしれませんが、一般的な経済状況のご家庭では手が届かないのが現状です。

人工知能の活躍が広がる介護現場!費用をどう下げるかが課題

ケアプランを作るという点では、自治体が音頭を取って人工知能を活用したシステムの普及が進みつつあります。「国・厚生労働省」が推進していることもあり、今後は全国的に広まっていく見込みです。

介護施設や在宅介護の現場に導入する人工知能搭載の「介護機器・ロボット」については、利用すれば便利なのは間違いありません。しかし、費用が高いために普及が思うように進んでいないというのが実情です。

介護ロボットの購入に関しては、介護施設に対しては国や自治体による補助金も支給されてはいます。それでも導入が進んでいないので、「費用の高さをどうするか?」介護分野の人工知能における大きなネック・課題であると言えるでしょう。