親に介護が必要になった時、正しい介護の仕方がわからない方も多いのではないでしょうか。介護は誰もが学ぶことではありませんが、いざというときまったく知らないのでは親を助けることができなくなってしまいます。
老人ホームやホームヘルパーの方にお願いするという手もありますが、相手は自分の親です。自分自身でやれることはやってあげたいと思う方も多いのではないでしょうか。今回は正しい介護の仕方・親の嫌がる介護の仕方(注意点)を紹介していきます。
ベッドからの起こし方「まずはベッドの端に立ってもらおう」
まず最初に「親をベッドから起こす方法」を紹介していきます。この動作は、主に「ベッドから車椅子」への移動の際に行います。まず、起きる側のベッドの端に座位の状態を作ってもらう必要があります。
そのため、ベッド中央で横になっている場合は、まず端に移動することから始めます。 親が自力で移動できる場合はいいのですが、寝たきりで移動が出来ない場合は私たちの手で移動させなければなりません。
この場合、まず親の身体を動かしやすいよう小さくまとめます。腕を組んでもらい、両足の膝を立てて身体の面積を少なくしましょう。介護する側は親の脇と腰の部分から手を入れ、まずは上半身を端に移動させてください。
その後、再び腰の位置と今度は下半身の大腿部分から手を差し込み、下半身を移動させます。親に動ける力が残っている場合は、できる範囲で協力してもらいましょう。これで端への移動は完了です。
ベッド端の位置から、まずは両足を床に降ろします。その後、介護者は親の肩の辺りを支えながらゆっくりと上半身を起こしてください。最後に身体のバランスは取れているか?足の底がきちんと床につけられているかを確認しましょう。
親が嫌がるのはこんなこと!ベッドから起こすときの注意点
どんな介護でも言えることですが、ぜったいに力任せではいけません。介護は力を使わなくても、正しいやり方をすればスムーズにいくのです。私が一番最初に介護していたときも力任せにしてしまい、母は不愉快そうな顔をしていました。
上手くいかないからといって、服を引っ張って持ち上げたり移動させたりしないようにしましょう。どうしても1人ではムリな時は、2人で行うようにしてください。
家が電動ベッドの場合は、上半身を起き上がらせてから介護をはじめるとやりやすくなります。ベッドを上げ下げする時、親の身体を挟まないように細心の注意を払ってください。実際に手や足を挟んでしまった事故があります。
親の移動の仕方「しっかりと身体を支えてあげる」
親が車椅子を利用する際は、後ろから押してあげたり自分で押してもらえばいいのですが、杖で移動する際は介護が必要です。歩行困難な方ほど身体のバランスが取りにくくなります。
介護者がきちんと支えてあげるようにしてください。親の脇から手を差し込み、身体を支えます。当たり前のことですが、杖を持つ手とは反対方向を支えるようにしてください。
親が片麻痺の場合は、私たちで麻痺側を支えます。ふらつきがあるようならば軽く背中を支えるようにしてください。親の行く方向と私たちが介護する方向がきちんと合うように、声をかけながらいきましょう。
親の移動の注意点
まず、親が歩きやすい靴を履いているか必ず確認してください。滑りやすいスリッパなどはもっての他です。転倒のリスクを減らすように、歩きやすい靴で移動しましょう。
また、親のスピードが遅いからといって自分のスピードで介護するのはぜったいにやめましょう。親は歩行が困難なために杖を使っているのです。出来るだけ段差を避けながら、ゆっくりと進んで行ってください。
親の清潔ケアの仕方「排泄介護と清拭のやり方とは?」
次は清潔ケアについてお話しします。清潔ケアのひとつである排泄介護は、親がどの程度まで自立しているかで大きく変わってきます。ある程度自立できる場合は、リハビリパンツを利用したりポータブルトイレの使用を検討してください。
親が寝たきりでオムツを使用する場合は、定期的に新しいものと交換する必要があります。親が腰を上げられる場合は、上げてもらっている間に新しいものと交換してください。
身体を動かすことが出来ない場合は一度横向きになってもらい、汚れたオムツを身体の下に差し込みます。そして新しいオムツを半分まで当て、さらに親を逆向きにした時に汚れたオムツを回収し、新しいものを綺麗に当て直しましょう。
排泄介護での注意点
ここでしてはいけないことは、オムツをムリやり引き抜くという行為です。 肌を傷つけてしまう恐れがあり、下手をすると褥瘡(※)の原因となってしまいます。 上記でも紹介したように、どうしても出来ない場合は2人で行うようにしてください。
褥瘡(じゃくそう)とは?
褥瘡とは、同じ部分への圧迫が持続し、皮膚の一部に傷・色味をおびてしまうことです。「床ずれ」ともいわれています。
また、排便の場合は「おしり拭きで拭き取る」という方法もありますが、あまりオススメは出来ません。おしり拭きでは拭き残しが発生する場合や、かぶれてしまう場合もあるからです。
もし余裕があるなら、お湯で臀部を洗ってあげてください。福祉専門のショップやネットでは臀部用の洗浄ボトルが販売されているので、ぜひ利用してみてください。
親の身体を拭いてあげよう
清潔ケアのひとつとして、清拭というものがあります。これは、適温に温めたお湯で親の身体を拭いてあげる介護のことを指します。ある程度自立している方には入浴介護を行うことが出来ますが、寝たきりの場合はそうもいきません。
外部に機械浴を依頼するという手もありますが、毎日は利用できないので入れない日は清拭を行いましょう。まず桶にお湯をため、タオルを濡らします。お湯の温度は50度以上にし、自分で適温に冷ましましょう。
拭き方としては、末梢から中枢へすべて上へ向けてタオルを滑らせていきます。親が自分で拭ける箇所がある場合は、自分で行ってもらうようにしましょう。露出している肌の部分は、風邪をひかないようにタオルや毛布などをかけてあげてください。
チェック
「身体に新しい怪我や異変」がないかの観察を忘れないようにしましょう。適度な力で拭いてあげると血行がよくなります。終わった後は髭剃りや爪切りなどを行い、身だしなみを整えてあげましょう。
清拭での注意点
身体を露出させてしまうので、風邪をひかせないよう配慮しなければなりません。 清拭を行う前に、部屋の温度は適温に保たれているか確認してください。また、力任せに拭いてしまうのはやめましょう。身体に跡が残ってしまう恐れがあります。
寝たきりの親を清拭する場合は、できるだけ負担を減らす必要があります。場合によって身体の向きを変えながら行いますが、回数を減らすようにして短時間で手早く行えるようにしましょう。
認知症の親への接し方は?親を否定しないことが大切
様々な介護も、親が認知症になると難しくなる場合があります。認知症の進行具合もありますが、暴力的になってしまうことも少なくありません。そんな時、介護をする私たちが親の人格を否定すると症状は悪化してしまいます。
まずは、親の声にきちんと耳を傾けることから始めましょう。きちんと相槌を打ちながら話を聞いてあげると、症状が和らぐ場合もあります。これは親の「認知症・終末期」にも同じことが言えます。
外部と関わりを持たせることも重要です。散歩に出かけたりデイサービスなどを利用して、他の人との交流を持たせましょう。生活に張りを持たせることで、認知症の進行を遅らせます。
この時に注意すべきことは、親の言動や行動から目を離さないようにすることです。認知症を患っている場合、思いもよらない行動を起こすことがあります。怪我や事故につながることもあるので、誰かが側にいる環境を作り、目を離さないようにしましょう。
介護者の負担を減らすには?
認知症介護の場合、途中でどうしたらいいのかわからなくなってしまう方、自分のやり方が正しいのかわからなくなってしまう方もいます。そんな時は自分だけで抱え込まず、外部の福祉サービスを利用してください。
「自分の親だから自分ひとりで介護しなくては」と考える方もいるでしょう。
しかし、自分がボロボロになってまで介護をすることは、親が一番嫌がるやり方なのではないでしょうか?私の亡き両親もそんな人でした。
相談だけでも構いません。自分のライフスタイルと相談しながら、どんなやり方が一番適切なのか探していきましょう。