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寝たきりの高齢者に多い床ずれとは?症状が悪化する前に知っておきたい予防と原因

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寝たきりの床ずれ予防・対策

高齢者が要介護状態となり、ベッドからの離床時間が減少してくると「床ずれ」を発症するリスクが高まります。「床ずれ」は恐ろしい病気です。症状が悪化すると「皮膚や肉が割け、骨まで見える」ようになることもあるのです。

床ずれは「重症化」しないイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。ベッドに長時間横になっていて、背中が擦れて傷ができる・・・
「床ずれで苦しんだ経験のない方」「苦しんでいる方を見たことがない」とその程度の症状と思われるかもしれません。

しかし、悪化すると本来の持病よりも床ずれに苦しむことにもなり、本来の病気の治療に加えて、床ずれの治療にも医療サービスを受ける必要も出てくるのです。

親の介護やご自身が要介護状態となったとき、余計な苦痛を増やさず治療費を加算しないためにも、床ずれはなんとしてでも防ぎたい症状と言えるでしょう。そこで今回は「床ずれの症状」に焦点を合わせ、発症のメカニズムや予防方法について取り上げていきます。

 

床ずれの症状とは?放っておくと命の危険も

心身状態が衰弱して介護度が上昇すると、ベッドの上で横になる時間が増えてきます。「介護職の方・介護経験のある方」は床ずれの怖さを知っていると思うので、予防のために最大限の注意を払うでしょう。

しかし「親が倒れて、はじめて介護に直面した」といった方だと、床ずれに関する知識が不十分なため、どんどん悪化してしまい「取り返しのつかないことになる」ということもありえます。

床ずれは予防すれば十分に防げるので、まずは「どのような症状なのか」を見ていき、効果的な対策方法を紹介いたします。
(関連:介護の始め方嚥下とは?「機能低下で起こる高齢者の窒息」

床ずれが起こる原因

床ずれは布団の上に同じ姿勢で長期間よこたわり続け、布団と背中の接触点が擦れることで起こる症状です。実際に仰向けよこになってみるとわかりますが、人の体重はまんべんなく背中全体にかかっているわけではありません。

実際に体重がかかっているのは、背面の骨が出ている数カ所です。具体的には、以下の箇所に体重が大きくかかります。

具体例

  • 頭を支える「後頭部」
  • 背中の突出部である「肩甲骨部」
  • お尻の上の出っ張った骨の「仙骨部」
  • 足の体重がかかる踵の「踵部(しょうぶ)」

また、仰向けよこになっていると「両腕・肘」の部分も布団に擦れるので、床ずれが起こりやすいです。要介護状態となっても、自分で体の寝返りをうつことができれば体重のかかる箇所を分散できるので、床ずれになるリスクは小さいと言えるでしょう。

しかし「体の衰弱が進んでしまう」「脳卒中の後遺症による麻痺で体が不自由になる」ことで、自分の力で寝返りを打てなくなります。そうなると床ずれの発症リスクは一気に高まるわけです。

ステージ1~4の段階で悪化していく床ずれの悪化

寝たきりに近い状態となり、背面の体重のかかる箇所が固定されてくると「床ずれ」が本格的にはじまります。床ずれは徐々に症状が悪化していく特徴を持ちますが、以下ではアメリカ褥瘡(じょくそう)諮問委員会が提唱するステージ1~ステージ4の分け方を紹介します。

床ずれの最初の段階(ステージ1)は、「赤くなって、赤みが消えなくなる」という状態です。この段階であれば、本人には「痛み・違和感」がありますが、皮膚が割けたりしていないので、患者本人や私のような素人には発症しているかどうか見極めが難しい部分もあります。

そこからさらに症状が進むと(ステージ2)、皮膚の一部に潰瘍が出るようになり、水疱なども発症。この段階になると目で見ても異常が起こっていることが明確にわかるようになります。

次の段階は全層皮膚が欠損し、皮下脂肪が目視できるステージ3です。骨や「筋肉・腱」は出ませんが「スラフ」と呼ばれる黄色壊死組織が現れることもあります。

そしてもっとも深刻な状態が、全層組織全体が欠損する段階((ステージ4))です。皮膚だけでなく傷口が「筋肉・腱・骨」にまで達し、骨が露出することも少なくありません。後頭部など皮下脂肪組織がない部位だと床ずれの傷自体は浅いですが、脂肪層が厚い部位がステージ3やステージ4になると傷は深くなります。

チェック

どのくらい深い傷なのかわからない「分類不能」「深部組織損傷の疑い(DTI)」といった症状もあります。体と布団の接触面に赤みが出てきたら、すみやかに主治医に相談すべきでしょう。

床ずれのステージ(アメリカ褥瘡諮問委員会の定義)

ステージ1の段階 消退していかない発赤
ステージ2の段階 真皮の部分的欠損
ステージ3の段階 全層組織の欠損。骨や筋肉、腱は露出していない
ステージ4の段階 骨や筋肉、腱が露出している全層組織の欠損の状態

床ずれを予防するために必要な体位変換

ステージ4の段階になると「筋肉や骨」まで見えるようになり、ここまでくると本人に大きな苦痛をもたらします。生活の質は大きく低下し、日々の暮らしが苦しいものとなってしまうでしょう。

ただ、「床ずれ」は心がけ次第で予防することができます。介護をする側はその点を意識し、普段から対策を取ることが必要です。まずは重要な予防法である「体位変換」について解説していきます。

定期的にベッドの上で姿勢を変えることが大事

床ずれは特定の部位に体重がかかり続けることで起こるます。「定期的に体の向きを横向きにする」、あるいは「背中にクッションをいれて体重のかかる箇所を変える」ことが有効です。

こうした布団の上での体の姿勢を変えることは「体位変換」と呼ばれ、要介護者の介護を行う上で重要なケア技法の一つと言えます。

オーソドックスな体位変換は、仰向けになっている体を介護者が引っ張り、横向きにすることです。ただ、介護者が若くて「体力・筋力」に自信があるならよいですが、そうでない場合、要介護者の体を引っ張るのは力が必要な作業となります。

要介護者も体の向きを変えるための筋力を使えるなら横向きになりやすいですが、そうでない場合は介護者の負担が大きくなることもあります。私も父の「体位変換」を何度もしましたが、なかなか大変な作業でした。

介護保険適用で体位変換を楽にする「体位変換機」をレンタルすることもできるので、利用したいときは担当のケアマネジャーに相談しましょう。(参考:介護の仕方で注意したい「起こし方・移動方法」

体圧を分散する

介護者の負担を減らしたい場合は、「ベッドの上にエアマットレスを敷く・クッションを入れる」などにより、体重による背面の体圧を分散させることが有効です。

体の向きを少し変えるだけでも体重のかかる箇所が変わり、体が一気に楽になります。こちらも介護保険適用で借りることができるので、必要に応じてレンタルすれば介護者の負担は軽減できるでしょう。(参考:介護保険サービスの自己負担額

スキンケアで床ずれを防止!乾燥を防ぎ、皮膚を清潔に保つことが重要

「体重のかかる部位を変えること」のほかにも、皮膚のケアを日頃から行うことも大事です。ケアを丁寧に行うことで「床ずれの起きにくい皮膚」にすることができます。ポイントになるのは、保湿クリームを塗って「乾燥を防ぐこと・清潔に保つこと」です。

皮膚の乾燥を防ぐためのケア

乾燥した状態が続くと、皮膚は摩擦によってはがれやすくなります。床ずれ予防のためにも「入浴や清拭」の後に撥水クリームを塗り、皮膚が乾燥しないようにすることも重要です。

また、心臓・脳の血管疾患で血流障害が起こっている場合、あるいは低栄養によって皮膚温が低い状態が続いてしまうと皮膚は薄くなって乾燥しやすくなる傾向です。

乾燥するとかゆみが出て、手でかくと皮膚の表面が傷つき、床ずれも起きやすくなるので撥水力の高い保湿クリームを塗りましょう。

オムツを使っている人は特に注意

オムツをしている方は、腰部が汚物で汚れていると皮膚組織がダメージを受けやすくなります。清潔さを保つためにも注意が必要です。仰向けになっていると、排泄物が腰部や臀部に流れ、皮膚をふやけさせてしまうことがあります。

ふやけた皮膚は「床ずれ」になりやすいので、介護者はおむつ周りの状態をチェックし、排せつ物で汚れている場合はきちんと拭き取り、きれいにしておくことが大事です。汚れたままの時間はできるだけ短くし、清潔な状態を保つことが床ずれ予防につながります。

床ずれは恐ろしい症状。早めの対応が大事!

症状が深刻化すると、皮下の骨や筋肉まで露出するようになる床ずれ。背面に少し赤い箇所があったら、悪化する前に対応することが求められます。症状が深刻化すると、本来の病気以上に苦しむことにもなりかねません。

介護保険適用により、床ずれ予防の「体位変換用器具」「体圧分散マット」を1~3割負担でレンタルすることもできます。必要に応じてぜひ活用しましょう。